2024/03/23
ファンゾーン
【マッチレポート】3月20日第5節 FC琉球戦
5試合、勝ちなし。倉貫監督が語った現状に対する思いは?
「ここからの3試合が大事」
「球際やセカンドボールの回収のスピード。まず、自分達がやりたいことをする前にそこで負けていたら勝てるわけがない」
琉球戦後、根本的な部分にフォーカスを置ききれていないチームへ、冨士田 康人は警鐘を鳴らした。前節・琉球戦では1-2で敗戦し、開幕5試合で2分2敗と勝ちがない状況に。YSは今、正念場を迎えている。
この現状に対して、指揮官はどのように感じているのか?琉球戦を振り返りつつ、この5試合を監督に総括してもらった。
琉球戦の振り返り
「僕の持っていき方としても、もうちょっと上手くできたかなっていうのはあった」
倉貫監督は琉球戦に対して反省の弁を口にした。
この試合では、スタメンに名を連ねていた松村 航希が直前に出場不可能となるアクシデントが発生。
山本 凌太郎を入れ、中里 崇宏をウイングバックに置いた。
監督はこの意図として「トラブルが起きた時には、ベテランで対応しようと思った」と言う。しかし、「結論としては中里にはアンカーにステイしてもらう方が良かった」と言及。「サイドに入るとどうしても長いスプリントが多くなるし、自由が減る。
彼にはアンカーとしてポンポンボールを動かしてもらった方が良かった」という部分が理由だとした。
「ただ、そこら辺についてはどっちに出るかっていうのはやってみないと分からないし、結果論になってしまう」としつつも、倉貫監督にとってはそれ以上に悔しさを感じるポイントがあったと明かす。
それはハーフタイムの振る舞いだった。
「やってみてから変えられることもあるが、後半の送り出しがもう少しシンプルでよかったと感じていいます。修正点が多くて『こうやからこうやから』と、3つ4つ伝えていた」ことで、逆に選手たちのプレーに制限を掛けてしまう形となったのではと感じていようだ。
「あんまり言ってもダメ。『風上やからもっとプレッシャーいけ。行ってこい!』で終わりで良かったと思う。
あっちもこっちもと言ってしまうと選手が動けなくなってしまう。後半上がりきらなかったのは僕のミスだなと感じています」
改善が見えないビルドアップ。推進力が欠けた原因は?
この5試合、特に選手たちが苦しんだのはビルドアップの部分だった。
3CBにGK児玉 潤が参加してボールを回すも、なかなか次のサードに持っていくことができず、むしろミスで相手ボールになったり、ボールを奪われてカウンターを許すシーンは少なくなかった。
まず、この陣形でビルドアップをしていった意図については「2トップが相手のポケット(ボランチの脇)に潜った時は、2トップが絡んでっていうことは言っていた。また、3バックが開くことで、一人一人の距離が遠いから(相手は)プレッシャーに行きずらくなる」と倉貫監督は説明。
しかし、ここ5試合では「バックラインと2トップの距離が長くなったしまうことが多く、なかなか(縦に)刺し込めなかった」と振り返った。
「距離が遠くなって、開いたところでボールロストが起きると前向きにカウンターを食らってしまう。内側にいたらセカンドボールを拾える。刺せればいいけど、刺せられないとツートップが潜っていく意味がなくなってしまう。そのためにWBやシャドーが場所を空けたりしているので、ロストした時にはそのスペースで数的優位が作られてしまう」
現状打破へは「差し込みやすくするために開いていたバックラインはそこまで開かなくていいのかなと感じた」と現時点での結論を設定。
「中盤にはより、近い距離で動かせとは言いました。あまり離れるなと。3CB+GKが入っても、大きくは離れずにどう2トップにボールを入れていくのか。ポケットに潜ったときにはウイングバックはここにいてと伝えている」
ビルドアップは元々YSのストロングとなっていた部分。
負のループに陥ってしまっていたことで、選手たちの自信も試合を迎えるごとに失われていっていた。
再び長所として魅了することに期待したい。
ポジティブ材料は?
5試合を通して「大きくは崩されてないですよね」という部分は倉貫監督にとってもポジティブに捉えている。
しかし、「結局ゼロで抑えられたのは水戸戦だけなのでそれでOKではない」と厳しい姿勢は変えなかった。
その姿勢は攻撃面でも同じ。
YSは今シーズン、サイドに人数を多くかけて崩していく形へのトライを続けている。
FC大阪戦では、そういったシーンが顕著に見られたが、逆にゴール前に人数が少なくなり、フィニッシュまで持っていく場面は多くは作れなかった。
「サイドから崩していく形を作っている中で、ゴール前の迫力に欠けてるいることが現象として起きている」と、倉貫監督も感想を持っていた。
「攻撃のところでも人数をかけて侵入していってというイメージは共有できている。あとはそこにクオリティがくっついてこないといけない状況」がここ5試合で起きていることで、指揮官は「そこに時間をかけていくことも大事だけど、他に明確にできることもある」という決断も明かしている。
「この現状でそこに対して掛けていく時間よりも現実的な姿勢を取った方がいいと感じている。形を作ると形ばっかりになったりもしてしまう。上手くバランスを取らないといけないし、サイドに人数をかけている分、ゴール前に人数がかからなかったら怖くらないよねってのいうのが多分相手の印象には残っていると思う」
「もう少し敵に対しての怖さを与えなきゃいけないからこそ、相手のCBにアタックをかけていく。鳥取戦はゴール前にボールが入っていける形をとっていきたいです」
「想定通り」の現状。しかし…
就任から約半シーズン。
元々ポゼッションや攻撃的なスタイルを軸にしていたチームに、倉貫監督は”相手がイヤがるサッカー”・”戦う姿勢”などをベースにし、守備にフォーカスを置き続けてきた。
元々は星川 敬前監督と似た、自分のサッカースタイルとビジョンの軸がある戦術家だが、昨シーズンに琉球を率いた経験とYSの現状を踏まえて『現実路線』で取り組んでいくことを決断。戦術家として数ある引き出しの中から必要なことを提示し、少しずつレールを敷いて前進している状況だ。
だからこそ、この状況に対しては「想定通りではある」と口に。しかし、サッカーをプレーするのは人間であり、人間には感情が入ってくる。「勝てないと出るモヤモヤ感は僕自身もそうだし、選手もそうだろうなというのは感じている。琉球戦が終わったあとのうなだれ感を見ているとそう思いますね」と、客観的に見た結果は監督だけでなく、チーム全体ににも影響する。
「想定通り」だけでは済まされない状況になること、その難しさを指揮官も噛み砕いている。
「今までで一番崩された場面が多かったですし、映像を見返すと上手くいったところを引き出されてという形が少なくない。そのリスクマネジメントをちゃんとしていかないといけない」
「5試合を終えて1回も勝ててへんっていうようなところで考えると、やっぱり勝って話をできる機会があった方が選手にとってもいい。成功体験がないとなかなかそういう話に持っていくことが難しい。勝利というポイントで頭の切り替えが出来てこそ、次はこうしていこうという段階の話ができる」
「だからこそ、色々なことを考えるとここからの3つが大事。時間もない中で今持っているもので勝負しないといけない。一つ一つを明確にしたい」
なにより、この現状に対しては応援するファンやサポーターも同じように苦しい思いをしている。
ホームでは3試合苦汁を飲まさせれおり、笑顔を届けることができていない。
「勝つしかないです」
倉貫監督は最後に、目の色を変えてファンやサポーターへ向けてのメッセージを残して締めくくっている。
「ほんまに。ただ、そんな簡単に勝てるわけでも無いのが難しいところ。現状に対しては色々な意見はあっていいですし、沢山言ってもらっていいと思っています。そこを覚悟してみんなでやっていった中で、今勝てていないとなると、サポーターのみなさんもそうですし、選手もスタッフも…もうみんな苦しいに決まってる」
「でも、それで『ああダメだ』ってなるのではなくて、ハートでやっていくしかない。選手も分かっています。そこに勝たせてあげられるようにするのが僕の仕事です。
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取材・文=小津那
小津 那 (オヅ ダン)
1999年2月10日生まれ。大学在学中からサッカーライターとして活動し、複数のメディアでの原稿を執筆。
大学卒業後の2021年7月からエルゴラッソ Y.S.C.C.担当記者に就任。
2022年7月からはGOAL Japan編集部を兼務し、Jリーグや日本代表を中心に取材経験を積む。
-------次節-------
明治安田J3リーグ第6節
Y.S.C.C. vs ガイナーレ鳥取
3月24日(日)14:00ko
【会場】ニッパツ三ツ沢球技場