2023/11/16
ファンゾーン
【マッチレポート】11月11日第35節 アスルクラロ沼津戦
「連敗で迎える残り3試合。現状打破へ必要な要素は」
“4試合連続無失点・4連勝”。Y.S.C.C.は34節、最高にインパクトのある肩書きを引っ提げて、首位・愛媛のホームに乗り込んだ。
しかし、結果は0-1と惜敗。5試合ぶりに黒星を喫することとなった。
そのような状況下で迎えたホームでの沼津戦。
愛媛戦同様、ビルドアップでは前線からの徹底された守備網に苦しむことに。すると38分、GK児玉潤のフィードを相手に拾われて失点を許す。
失点後はYSがボールを握りながら押し込んでいく展開は続いていたものの、均衡を破ることはできずに連敗で試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
指揮官はどう見た?
「危険な場面はそこまでなかった印象」
試合終了後の会見で、倉貫一毅監督は沼津戦の印象を振り返っている。
失点シーンは「相手のアクションに対して動きが止まった形」と分析。「先週、もう少し止まらないようにプレーしようと話はしていたが、映像を見直してしっかりと確認したい」と続けている。
愛媛戦、沼津戦と続いてストロングであるビルドアップ、ポゼッションで苦しんだYS。GKを加えて最終ラインでボールを回していたものの、特に前半はなかなか縦につけるボールや背後へのロングボールが噛み合わず、アタッキングサードへボールを運ぶ回数は多くなかった。
このような事象が起きた原因として倉貫監督は「ウイングバックとウイングの関係性」について言及。この試合では両ウイングバックに中里崇宏と冨士田康人を起用。攻撃時に内側へ入っていく”可変”ができる選手を両サイドでチョイスした。
しかし、守備時にウイングバックの位置に基本的にいることから「真ん中にボールが入った時に間に合わない場合がある。その中でセンターに(ボールを)突っ込みすぎると、セカンドボールが拾いにくくなったり、前向きのサポートが遅れてくる」ことが起きたという。そうなると「アンカーの両脇が空いてしまう」ため、「ボールを運んでいく安定感を欠いた1つの要素」になったと回顧。ここ最近の試合では右WBにサイドプレーヤーの松村航希を起用していたことで両サイドでの可変はしていなかったことから、この判断に「弊害は少し出た」と認めていた。
成長著しい”カイザー”二階堂正哉
“カイザー”…それは皇帝を意味する元西ドイツ代表のレジェンド、フランツ・ベッケンバウアー氏の愛称だ。同氏も務めていたポジションで、二階堂正哉がYSの”カイザー”として風格を漂わせはじめている。
敗戦となったが、この試合でも圧倒的な存在感を放っていたのはルーキーの二階堂。シーズン中盤にスタメンで起用されて以降は定位置を譲ることなく、沼津戦でも3CBの中央で先発出場。空中戦に対人…向かうところ敵無しと言っても過言ではないプレーを見せている。
最近のプレーぶりについて二階堂も「やるべきことは結構明確になってきていると思う」と手ごたえを感じているようだ。
「相手のロングボールをただクリアするだけじゃなくてパスにするところや空中戦は自分としても特に意識している。毎週の試合を通して、自分の経験値に繋がっていると思う」
それでも、90分通して苦しんだビルドアップの部分には「最近あんまり良くないなという印象」と吐露。「攻撃の形、背後を狙うところやボールをつなぐところがしっかりと形になっていない気がする。ビルドアップやポゼッションの部分もただ回しているという形になっていて、良くないときの流れがでてきてしまっている。打開策をチーム全体でしっかり見出していきたい」と課題も口にした。
今後に向けて、さらなる成長へ必要な要素を問うと、二階堂は真剣な面持ちで言葉を紡いでいる。
「自分の身長の部分は今までずっと言われてきた。
今から身長伸ばすことはできない。それでもやれてるねと言われるようになりたい」
「空中戦だったり1対1だったり…ポジショニングや細かい部分は自分の強みだと思っている。そこの精度をもっと上げていくのと、どんな相手にも安定したパフォーマンスを見せていくこと。もっと磨いていきたい」
光った控え選手たちの可能性
沼津戦で目立ったのは、一点ビハインドで迎えた後半中盤以降のパフォーマンスだった。まず、筆者が思わず試合中に声を出してしまったのは89分のシーン。エリア左から橋本陸斗が左足でクロスを上げると、ファーで古賀俊太郎がヘディングで合わせた。
惜しくもGKのセーブに遭ったものの、32節に古賀が決めたヘディングシュートとほぼ同じ形でのシーン。
古賀自身も「宮崎戦も含めて、ヘディングを練習してるのはあった」としつつ「今週も感覚は良くて。なんとなく感覚を自分の中で掴んできたなっていうのはある」と口に。「振り返ったら決めれたシーンではあったかなと感じている」と悔しさをこぼしたが、再現性の高い攻撃を作り出せたことは間違いないだろう。
他にも、57分に同時投入された脇坂崚平と山本凌太郎も印象的な活躍を見せた。
前者は前線から積極的にボールに絡んで攻撃のリズムを作り、後者は86分にポスト直撃のミドルシュート。指揮官も「入ったかなと思った」と話した場面だったが、このチャンスも2人の連携から作ったものだった。
最近倉貫監督が口にしているのは「追い越す動き」と「相手の嫌がる動き」。この2つを特に攻撃面で求めている。交代で入った選手たちが要求を体現した試合に、倉貫監督も「いいもの出してくれた」と言及。「プレー自体は良かったと思うし、意識も非常に良かったと思う」と称賛している。
指揮官も強調したが、重要なのは「これを続けていく」こと。「他の選手含め、クオリティを全体として上げていくのは改めて必要だと感じている」と話した通り、再現性の部分も体現する部分も継続して発揮できなければ本末転倒だ。現在13勝9分13敗。勝ち越してシーズンを終えるのか、さらには8位以上というクラブ史上最高の順位で終えることも不可能ではない。
連敗で迎えた残り3試合。まずは現状打破へ、課題であるビルドアップ面でのソリューション策を見つけることにフォーカスを置きたいところ。そして、著しい活躍を見せた控え選手含め、総力戦でさらなる高みを期待したい。
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取材・文=小津那
小津 那 (オヅ ダン)
1999年2月10日生まれ。大学在学中からサッカーライターとして活動し、複数のメディアでの原稿を執筆。
大学卒業後の2021年7月からエルゴラッソ Y.S.C.C.担当記者に就任。
2022年7月からはGOAL Japan編集部を兼務し、Jリーグや日本代表を中心に取材経験を積む。
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