2023/07/13
ファンゾーン
【マッチレポート】7月8日第17節 カマタマーレ讃岐戦
「今季ワースト」のゲーム。正念場をどう生かす?
「今季ワーストのゲーム」
試合後、星川敬監督の口から出た言葉だ。
明治安田生命J3リーグ・第17節。Y.S.C.C.横浜はカマタマーレ讃岐と対戦。前半早々の2分に佐藤大樹の2戦連発となるゴールで先制するも、11分と40分に失点。後半にゴールを奪うことは出来ずに1-2で敗戦となり、YSは4戦勝ち無しとなった。
噛み合わなかった攻撃面
まずは、カルロス・アローヨについて振り返りたい。この日、星川監督はカルロスを先発に抜擢。カルロスにとってはこの試合が初先発に。3月末に加入以降サブからの出場が続いていた同選手にとっては真価の問われる一戦となった。
過去の試合からも見せていた圧倒的なフィジカルによる球際の強さにはこの試合でも光るものを見せたカルロス。しかし、13分には1点ものの決定機を決め切ることが出来ずに前半で交代となった。
カルロスは長身ながらも足元の技術に長けたタイプで、セカンドストライカー的な役割の方が比較的得意としているタイプ。この試合では前線の頂点になり、ロングボールのポストとなる形が多かったことでストロングを活かし切れず。星川監督は「時間が解決してくれると思う」と評価している。
この試合では、YSの得意とする左サイドからの攻撃が終始鳴りを潜める形となった。上手くいっていたのは冒頭開始10分のみ。道本大飛と福田翔生、古賀俊太郎の絶妙な位置関係から左サイドのバイタル付近を完全に制圧。先制点も3人の連携から生まれていた。開始早々からYSの良さが出ていたことで、大量得点の期待もサポーターは抱いたことだろう。しかし、そう簡単にはいかなかった。
先制点以降、道本の立ち位置が通常よりもやや低めになり、アタッキングサードへ持ち込むまでの距離が遠くなっていた。本人も「仕掛ける位置が低く、2枚抜かないといけない状況だった」と振り返っている。
原因としては2つ考えられる。
まず、普段の試合では福田が2トップの頂点に立つことが多く、相手のディフェンスラインをロックすることで道本にスペースが生まれていた。しかし、この試合ではその役割をカルロスが務め、福田が低い位置でボールを要求していたことで、左サイドの人数が過多になっていた。
いつもであれば福田は背後に抜ける動きでスペースに飛び出すが、その走ったスペースに道本が顔を出していた。
また、ビルドアップ面だ。この試合では、藤原拓也がボールをドライブ(前進)する場面が少なかった。
通常ではこの動きにより、左CBの花房稔が高い位置を取ることができ、全体的な立ち位置の押し上げが可能に。
讃岐戦は押し上げる前に、藤原から道本へのパスが入ることが少なくなかった。
上記の流れが90分通して続いてしまったことで、武器である道本が起点となる攻撃に持ち込みにくい状況が続いたのかもしれない。
「ああなってきたら、やっぱり僕も中でもっとプレーできるようになんなきゃいけないし、プレーの幅増やさなきゃいけない」と、道本は個人的な課題を口にしていた。
取り戻したい自信
「調子が悪かろうが、しっかりある程度の強度で走って、相手のボールを追って、セカンドボールも拾って、攻撃になったら前に行くっていう、そういう基本的なゲームってところが全然できていなかった」
戦術のところではなく選手たちの試合への姿勢に対して納得がいっていなかったと、星川監督は試合後に明かしている。ハーフタイムには、選手たちはスタッフ陣から喝を入れられていたという。人数が足りていたにも関わらずの2失点や、ストロングであるビルドアップ面での迷い、負け無しが続いていたときにはあまり見受けられなかったシーンが増えている印象。試合を通して、選手たちからも迷いや自信を失っているような雰囲気は会場からも感じ取れた。
8戦負け無しだった時期にも、内容がそこまで良くなくとも終盤の同点弾や逆転弾で勝ち点を奪取していた試合もあった。しかし、そのような試合は毎回出来る訳では無い。その救世主となっていた福田にも良い日もあれば悪い日もある。
チームとしてもそれは理解している。福田が大爆発していたことで生まれた良かった状況から、個だけではなくチームとして点を取れるよう、さらに成長を促すために戦術をブラッシュアップしているところ。
実際、良かったときに継続して起用していた中里崇宏や萱沼優聖をベンチスタートとし、成長著しい若手選手たちを使うなど、チームに競争を促している。
「まずは、やっぱりYSのためにしっかり戦うかどうか。やっぱり今日の11人と交代で入った選手たちが、出たい選手よりもやってたかどうかっていうのは、すごい僕は疑問に思う。そういう意欲のある選手を、もっと使っていきたい気持ちもある。今日はそういうメッセージだった」
「それを押し返すだけの、その経験の無さやリーダー不在は試合をして感じたところ。逆に、前半にCBが交代して後半に(二階堂正哉)が中央でプレーして凄い良かった。それは希望に思ったし、しっかり、こういう時に自分のできるプレーを1個1個やるしかない」
星川監督は、讃岐戦をこのように締めくくっている。
8試合からの4試合勝ち無し。チームとしては得た自信を元に、さらなる成長を目論んだ中で足踏みをすることとなった。
無論、挑戦には失敗が付き物。結果は付いてきてはいないものの、この失敗をポジティブに捉えて成長へのトライを続けて欲しいところ。長いシーズンの中で、YSの現状は正念場だろう。
この正念場をどう生かすか。次節の岩手戦は非常に重要なゲームとなる。星川監督の采配に注目だ。
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取材・文=小津那
小津 那 (オヅ ダン)
1999年2月10日生まれ。大学在学中からサッカーライターとして活動し、複数のメディアでの原稿を執筆。
大学卒業後の2021年7月からエルゴラッソ Y.S.C.C.横浜担当記者に就任。
2022年7月からはGOAL Japan編集部を兼務し、Jリーグや日本代表を中心に取材経験を積む。
-------次節-------
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7月16日(日)18:00ko
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【会場】いわぎんスタジアム
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