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【マッチレポート】7月30日第20節 FC岐阜戦
2023年08月03日
ファンゾーン
“執念”でもぎ取った待望の勝ち点3
久々にニッパツの地が歓喜の渦に包まれた。
J3第20節、Y.S.C.C.はFC岐阜と対戦。星川敬監督は前節・琉球戦と同じ11人を起用。ホームで白星を飾るべく、早々からチャンスを作っていく。9分に福田翔生がドリブル突破から自らシュート。GKがセーブしたこぼれ球に反応した萱沼優聖が詰めるも、相手ディフェンスにブロックされた。
勢いそのままに流れを引き寄せたいYSだったが、強豪である岐阜がそう簡単に主導権を渡すわけが無い。スキの無い徹底したポジショニングで決定機を作らせず、スコアレスで前半を折り返した。
難しい状況が続いたものの、均衡をこじ開けたのはYSだった。66分、右CKから波状攻撃を続け、エリア内での混戦を制したのは道本大飛。右足を豪快に振り抜いてネットに突き刺して先制に成功する。
その後は岐阜が押し込み、YSがカウンターを狙う展開が続く。スコアが動くことなく迎えた終盤には、岐阜の一方的な展開に。アディショナルタイムには宇賀神友弥のポストに直撃するシュートなどがあるも、試合が振り出しに戻ることなく終了の笛。
YS守備陣の決死のディフェンスで1点をなんとか守り、後半戦初戦で勝利を収めてみせた。
見出し始めたカルロスの適正位置
まずは、以前から星川監督が「時間が解決する」と期待を寄せていたカルロス・アローヨについて触れたい。
初めてスタメンを飾ってから4試合連続で先発している同選手が、徐々に才能の片鱗を見せ始めている。
この試合では2列目で起用されたエクアドル人選手は、YSが全体的に苦戦する中で前半から存在感を放っていた。
他の攻撃陣との連携面や守備時の立ち位置など課題は残るものの、圧倒的なフィジカルでボールを譲ることはなく、独特なタッチと快速を活かしてスルスルと相手を剥がして攻撃の起点に。
チャンスメイクに直結するプレーは無かったが、最前線で使われていた試合よりも生き生きとしていたことは明白だった。
負傷により途中交代となってしまったことは残念だが、多少低い位置でプレーする方がカルロスの良さを生かせるという可能性を見出したことは今後へ大きなプラスになっただろう。
道本大飛は”アタッカー”へ
デビューから13試合目にして、待望のJ初ゴール。YSのセカンドチームから虎視眈々と続けた努力が、ようやく結果として実った。
試合後、道本は「試合の3日前くらいから決めそうだなって思っていました」と一言。本人には得点の予感はしていたようだ。
福田の活躍の影に隠れがちだが、道本はこれまで幾度となく相手の脅威になり続けていた。チームとしても攻撃面では、いかに道本にボールを届けるかというところにフォーカスをおき、ブラッシュアップを続けてきている。
同状況については道本も責任を常に感じていた。話を聞いたときには必ず「自分が結果を残さないと」という言葉を口にし、自分自身を奮い立たせて試合に臨んでいる。
「自分が貢献できてるのか分からず、もどかしい日々が続いていて。ここで1つチームにお返しできて、 信じて使ってくれたスタッフやチームメイトには本当に感謝しかないなと思っています」と安堵の表情を見せていた。
「これで”チャンスメーカー”ではなく、”アタッカー”になれたと思います」
最後に彼は「1点取れば一気に爆発できると思っていた」と締めくくっている。常に願い続けた”アタッカー”という役割にようやく辿りついた道本。今後の大きな飛躍に期待がかかる。
ポゼッションが全てではない
今季のYSはポゼッションサッカーをベースにし、組織的な戦い方で勝ち点を積み上げてきた。
これまでは左右非対称の可変システムだったところを、ここ数試合では左WBに本来は中盤が本職の古賀俊太郎を起用するだけでなく、右WBにもMFの冨士田康人を配置。両WBがビルドアップ時に中央に絞る左右対称の立ち位置を取ることで、さらに中盤に厚みを加える形にトライしている。
この試合ではストロングとしているポゼッション部分が、あまり無かった様に見えたかもしれない。
特に前半は相手にボールを持たれる時間の方が多く、守備に奔走するシーンが散見されていた。そしてボールを持った時にも横や後ろ向きのパスが多く、前線まで運ぶ流れは多くなかった。
同状況について冨士田は「相手を走らせたい意図があった」と説明。無理に攻め急ぐことはしないという判断をしていたことを明かしていた。
しかし、チームとしてはそれ以上に焦点を置いていた部分があった。サッカーとして根本的に必要とされている「戦う」こと。球際の部分で負けない、ゴール前で拘る、集中力を切らさない…ここ数試合で監督が足りていないと何度も口にし、常に求めていた要素だ。
個々のクオリティが高い岐阜を相手に、このような部分でも劣ってしまえば結果は違っていたかもしれない。
この試合では試合に出た全員が90分通して意識を持って戦い続けていた。
「パスで綺麗に崩すことが目標に掲げてるサッカーですけど、 ベースにある戦うだったり、集中力を切らさないだったりをするのが前提。今日はチームを通して、サッカーにおいて1番大事な部分が常に出来ていたと思います」
冨士田は試合後にそう振り返った。J3では個性的とされる戦い方をしているYSだが、結果がついてこなければ意味は無い。白星が無かった7試合で足りなかった執念を全面に出し続けた結果が、強豪岐阜にシーズンダブルを達成出来た1番の要因なのかもしれない。
待望の勝利だが、星川監督は「岐阜に勝ったから次も勝てるとは限らない」とキッパリ。
再びJ3に旋風を巻き起こすため、YSのチャレンジは続く。
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取材・文=小津那
小津 那 (オヅ ダン)
1999年2月10日生まれ。大学在学中からサッカーライターとして活動し、複数のメディアでの原稿を執筆。
大学卒業後の2021年7月からエルゴラッソ Y.S.C.C.担当記者に就任。
2022年7月からはGOAL Japan編集部を兼務し、Jリーグや日本代表を中心に取材経験を積む。
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